第1章 保健室
「泣くな。」
「えっ…?」
あたしが振り返ろうとすると、その男にふわっと後ろから抱きしめられた。
なんだろう…。
この感触は。
背はあたしより数段高いその人。
馴れた手つき。
きっとあたしじゃなくてもこうゆうことしてるんだろうな…。
無言の少し重い空気が漂った。
最低だ…
あたしが抵抗出来ないから、その男は心のこもってないハグをするんだ。
よく考えろ。あたし。
男を振り払え。あたし。
でも男はさらにギュッとあたしを強く抱きしめた。
あたしどうしちゃったんだろう…。
ただ抱きしめられてるだけなのに、名前も知らない、まともにはなしたこともない男にときめいてしまった。