第1章 保健室
この人…ちょっとかっこいい…。
あたしは不覚にも自分の上にまたがっている男にクラッときてしまった。
「先輩…?」
「ん?」
「あの、どいて下さい…」
「…無理。」
その男はきっぱりと断り、あたしの頬にそっと触れた…。
あまりにもその男が色っぽい艶かしい表情を浮かべたので、何も言えなくなってしまった。
「んっ…」
その手つきがあまりにも優しくて思わず声が出た。
すぐにでも払い除けたい気分だったが、具合が悪いせいか体が妙に重かった。
「ふっ…」
あたしが動けないということがわかると、男はニヤリと笑った。
…そして、
唇が重なった。
名前も知らない。話したこともない。付き合ってるわけでもない。
それなのにあたしは体のだるさに負けて無理矢理唇を奪われてしまった…。
悔しさと驚きと虚しさで涙が出た。
「…っ…」
「…わりぃ。」
その男ははっとしたようにゆっくりと慌てて謝った。
意外にも優しい口調で心が締め付けられるようだった。
でもなぜだかあたしの涙は止まらなかった。
…あたしは制服の袖で目を押さえながらベッドの上から立ち上がろうとした。
すると、男もベッドから立ち上がった。