第2章 帰り道
チャ、チャリ王子…?
グレーのマフラー、ブレザーの袖からでるセーター、少し乱れた髪、
ハッと白い息を吐いた。
久々にみたな…
驚きと緊張と嬉しさでなんとも言えない空気が二人の間に流れた。
「あっ…えっと…」
寒さで呂律が回らない。
いや、なにを喋っていいかわからなかった。
そこでチャリ王子が口を開いた。
「いや、わりぃ。なんか泣いてたから」
恥ずかしそうにチャリ王子は乱れた髪をさらにくしゃくしゃにした。
あたしの涙はいつの間にか止まっていた。
「あっ…そうですね」
【そうですね】…? なんか意味わかんない返答だったかな…笑
「帰り道、けっこう会うよな?」
「で、ですね!」
「まぁ…なにがあったかわかんねぇけど泣くなよ、」
優しいんだな、この人は。
「はい…」
なのにあたしはこんなにもありきたりな返事しか出来ない。
もどかしかった。
「んじゃ…」
チャリ王子はチャリのサドルにすっとまたがり、坂を下ろうとした。
待って…!
「あの…ありがとう。」
チャリ王子は何も言わずにニッと笑った。
そして勢いよくチャリをこいでいってしまった。
「あっ…」
もういっちゃった…。
あっという間だったな。