第11章 Who is it that I need?
「アイリーン」
女がはっきりとアイリーンの名を出した。
俺は首がもげそうな勢いで女の方を向く。
「私とあなたは利害が一致してるの、どう?組まない?そうすれば…」
真っ黒なタイトドレスを身にまとった女は御者の席から降りて、窓にするりと侵入してくる。
「アイリーンをあの悪魔から救ってあげられる」
あの悪魔…そうだ、セバスチャン・ミカエリスだ。
俺とアイリーンの間を裂く邪魔者。
あいつさえ消えれば俺らは幸せになれる。
「お仲間になってくれるなら、ここにキスして」
女は手袋を外して手の甲を差し出した。
そこには奇妙な刺青が施されている。
「…アイリーンのためなら何でもする」
俺はその手をとり、刺青の中央に唇を落とした。
「ありがとう。私の名前はロゼ・セザンヌ。よろしくね、レイ侯爵」
ロゼ・セザンヌと名乗った女から俺は目が離せなかった。