第9章 牙
ちょうどいいタイミングで現れてくれて私はマーガレットの方へと駆け寄る。
「どうしましたか?」
「私…今日、牧師様のお話を聞いてすごく感動しました!両親を亡くした私の心にすごく響いて…なので、この教会で働かせてもらえませんか?私も主にお仕えしたいのです」
後ろで私を見つめていたセバスチャンが目を丸くしているだろう。
マーガレットは顎に手をあてて少しの間考えるとか細い声でジルを呼んだ。
「どうしたのです?マギー」
「お兄様、この方たちが主にお仕えしたいと申しているのですが、どうしますか?」
「ほう…」
ジルが私たちのつま先から頭の先まで舐めるように見る。それを3回ほど繰り返すとジルはぱんと手のひらをうって笑顔を見せた。
「いいでしょう!今日からいらっしゃってください。お名前は?」
ー本名はまずいわよね
「あ、あわ、私はリュシーです」
「そちらは?」
「エドワードです」
セバスチャンの意外な答えに私は噴き出した。世界一エドワードという名が似合わない男はセバスチャン以外にはいないだろう。
「リュシーとエドワードですね。私たちのことはお好きなようにお呼びください。牧師様でも、ジルとでも」
マーガレットもその言葉に頷く。さらりと髪が揺れた。
「マギー。私は部屋に戻りますからその2人を案内して差し上げなさい」
「はい、お兄様」