第2章 見知らぬの男
「えっ、引ったくり!?それで今何処にいるんですか!?」
「あの、荷物は親切な人が取り戻してくれたので大丈」
「何処にいるのか教えて下さい!」
「えっと…」
普段になく焦った様子の安室にも動揺しつつ、近くの電柱に書かれた住所を読み上げると、電話越しにバタバタと慌ただしい音を響かせ切れてしまった。
「…ここにいるようにって言われたけど、安室さんどうしてあんなに…」
引ったくりなんて言ったから心配させてしまったのだろうか、
それともポアロで何かあって焦っていたのだろうか?
色々と考えを巡らせていても理由は分からなくて、近くの壁に背を付けスマホを弄っていると、此方に向かい近付いてくる足音が聞こえたので顔を上げて確認をした先には、息を乱した安室が勢いのままを抱き竦めた。
は何がなんなのか分からずにアタフタとしてしまう
「あ、安室さん!?し、仕事は?どうして、あのッ」
「ハァ…ハァ…、怪我は…?」
「怪我?…大丈夫です、何ともないです。」
「良かった…」
肩で息をしながら抱きしめる手を緩ませ顔を覗き込まれたは、安室の真剣な瞳にドキンと胸が高鳴り怪我はない事を伝えると、心底ホッとしたように息を吐いた安室の額に汗が滲んでいるのが分かり、はハンカチで額を拭う
「すみません…心配おかけして」
「…当たり前じゃないですか、貴女は僕の大切な人だ。」
「安室さん…」
「本当に、怪我がなくて良かった」
安心したようにそっと抱きしめられると、安室の体温の高さに胸が締め付けられるようにドキドキと鳴り響き、心配をかけてしまった事が申し訳ないと思う気持ちが表情に現れていたのか、安室にポンポンと頭を撫でられ微笑まれる。
その優しさに甘えたくなってしまう。
こんなに大切にして貰って、怖いくらいで…
それでも幸せに感じてしまう自分自身に苦笑いが漏れた。
「…安室さん、仕事中だったのでは?」
「はい、急いで戻らなくては怒られてしまいますね。」
「大変じゃないですか!戻って下さい、私なら一人で」
「駄目ですよ」
グッと腕を掴まれたかと思うと絡め取るよう手を繋がれてしまった
「貴女を一人残してはいけない、仕事も大切ですが貴女の身を守るのも僕の役目です。」
「!?」