第1章 芽生えた気持ち
大切な人を、俺はいくつも失った
人の命は儚く、そして脆い
ヒロ、お前の命を奪い去った悪を
僕は、許す事が出来ない
「いらっしゃいませ、おや今日はお一人ですか?」
「はい、蘭は空手の大会が近いので自主練です」
「頑張りますね、蘭さん」
「本当に、全国制覇も夢ではないと思うくらい毎日頑張っています、でも・・少し心配で」
「?立ち話も何ですから、どうぞ」
「ありがとうございます」
いつもの御気に入り、カウンター席に腰を下ろしジャケットを椅子にかけると、隣に安室も腰を下ろした
「安室さん?」
「丁度休憩時間に入りますので、よろしければ先程の続きを聞かせて下さい。」
「でも、折角の休憩時間を安室さん休まないと・・」
エプロンを畳み自身の膝に置きつつ、気遣いの言葉を口にするに微笑むと、は驚いたように大きな目を見開いた
「大丈夫ですよ、鍛えていますから。休憩を一回抜いても支障はないですから」
「あら、安室さんてば休憩いらないのならこのままシフトに入ってくれても大丈夫ですよ?忙しいですし」
何てカウンター越しにカップを拭きながら笑う梓に、安室は苦笑いを浮かべつつ参りましたね、等と言うと梓は冗談ですよ~とお客様の注文を取りに行ってしまうと、と安室は見つめあいながら笑った
そう、こんな何気ない日常がずっと続くと信じていた
居心地の良い空間を作り出してくれる安室に、が恋心を抱くまでは・・
「ー・・てる!?!?」
「へ?あれ、蘭・・?」
「蘭じゃないよ、何度も呼んでるのにボーっと外ばかり見たりして、いったいどーしたの?」
「何でもないよ」
「・・ねぇ、私達友達だよね?」
「うん」
「なら話して、何に悩んでいるの?」
「・・・」
言えるはずがない
だって、ずっと良き相談相手の優しいお兄さんだと思っていた相手に、恋をしてしまったなんて。
が黙り込み俯くと、蘭の口から安室さん?と聞こえて驚いた
「ねぇあれ、安室さんじゃない?」
「何言ってるの蘭、安室さんが教室にいるはずがないでしょ?」
「違うよあそこ」