第16章 赤い糸
「メインは、やっぱり赤だよねぇ。」
何事も無かったかのように戻って来た七葉は、キットから赤系の色のサンプルをいくつか取り出す。
「加州なら、普通の赤よりワインレッドかバーガンディ?いや、ボルドーとか臙脂かな?」
そんなことを言っている七葉に、加州は思わず声をかける。
加州「主、、、」
しかし、何も聞かないで。聞きたくない。聞かれたくない。といったような表情に、加州はそのまま黙るしかなかった。
「せっかくだから人差し指と薬指は、加州のコートの裏地の柄にしようかな?で小指は赤でスタッズ、残りは黒に金ラメ~。」
デザインについて楽しそうに話す七葉に、加州も先程の出来事を忘れることにする。
加州「主の好きな感じでいいよ?好みにデコっちゃて!」
それで少しでも好きになってくれたら。そんなことを思いながら答えると、またぁ~?と主が笑う。
あぁ、どうしたらこの笑顔が自分のものになるのだろう。
加州「いいじゃん、いいじゃん!主、センス良いもん。」
加州は、そんな風に自分の気持ちを隠しながらは言うと、主の前に両手を差し出した。
「加州の爪、綺麗だよね。これは、鳳仙花?」
七葉は、差し出された加州の指をそっと摘まんで呟く。
加州「そうだよ、よく知ってるね。」
「まぁね。って事は落ちないし、今回はそのまま上から重ねちゃうね。」
爪紅の歴史は以外と古く、鳳仙花や紅花で作られていて、今の時代のように爪に塗るのではなくどちらかと言うと染め物のように爪自体を着色してしまうので、上手く染めると爪が入れ代わる半年近く残るものらしい。
そんなにわかな知識から、クリア系が入るフレンチやグラデーションはダメだなぁ~と、元の色をいかすデザインを考え七葉は早速加州の爪に装飾を始めた。
まずは、指を消毒してヤスリで爪にキズをつける。
続いて親指以外の指にべ一スジェルを塗って硬化。
デザイン毎に、ベースカラ一を塗って硬化を数回くらい繰り返し、市松を角度をかえて貼ったり、スタッズやラインでデコって仕上げていく。
最後にトップジェルを塗ってそれぞれの装飾パーツが取れてしまわないように埋め込んだら、未硬化ジェルを拭き取って4本の指が仕上がった。