第15章 IHと炊飯器の正体
食事をして、何かしたいと言う加州の申し出に洗い物を任せ、その間にお風呂に入る。
シャワーでささっと済ませパジャマに着替えて戻ると、部屋で加州がくつろいでいた。
「加州、お待たせ。」
加州「あっ主、おかえり~って髪ビショビショじゃん。」
加州は、こちらに気づくとすぐに寄ってきて髪に触れる。
七葉は、いきなり触れられ一瞬固まるが何事も無かったように直ぐに返事をした。
「あっえっと、タオルドライ苦手なんだよね。」
そう言ってタオルでガシガシと頭をふくと、加州にタオルを取り上げられる。
加州「あぁもう。せっかく長くて綺麗な黒髪なのに、そんなふきかたしたら髪が傷むよ。かして。」
加州は七葉を座らせると後に回り、髪をタオルにはさんでトントンとふきはじめる。
甲斐甲斐しく世話をされて、何だか嬉しくて笑ってしまう。
「ふふふっ、加州上手だね。」
加州「まぁね。安定もさぁ、髪おろすと長いのにふくの下手くそでたまにやってやってたんだ。」
そう言いながら、懐かしそうに話す加州を見て早く会わせてあげたいなぁと思う。
しばらく大人しくしていると、加州の手が髪からはなれた。
加州「はい、おしまい。」
「わぁ~、ドライヤー使ってないのにツルツルサラサラだぁ。」
感激して自分の髪を撫でていると、不意に後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれる。
加州「ねぇ主、ご褒美ちょうだい。」
そのまま耳をあまがみされ、七葉はバッと体をはなした。
「あっ、、っ。そ、そうだ爪。爪やってあげる。」
加州「主。俺、、、」
加州は何か言いたげに呟いたが、七葉はそれを聞かずに立ちあがりネイルキットを取りに向かった。
流されてはいけない。
だって加州が好きなのは、可愛がってくれて着飾ってくれる主であり、きっと自分自身では無いのだから。
七葉はそんな事を思いながら棚からキットを取り出す。
だったらせめて、加州の望む主でいよう。
主としてでいい、必要とされる為に。