第12章 現実に来ちゃった
車に乗り込み仕事場へ向かう。
結局なんだかんだで、家を出るのが少し遅くなってしまったが、信号が青でスムーズに行けた為遅刻は免れた。
仕事中も加州の事が気になり、どこか上の空であまり仕事が手につかない。
今日の仕事が半日で本当に良かった。
これ以上続けたら、何か取り返しの出来ないミスをやらかしそうだ。
そんな事を考えているうちにあっという間に仕事は終わった。
帰宅途中にコンビニに寄り、自分と加州の分のお弁当を買い家に戻る。
玄関を開け、部屋のドアを開けたら所で加州の後ろ姿が視界に入り七葉はホッと胸を撫で下ろした。
「加州、ただいまぁ!朝はごめんね、バタバタしてて。お昼買ってきたから一緒に食べよう!」
そう言ってお弁当を差し出したが返事がない。
「加州?」
不思議に思って、加州の前に回り込むと両手に何か握っている。
、
加州「主ってさ、三日月宗近推しだったんだ。」
そう言って開かれた加州の右手には、三日月宗近のストラップが入っていた。
「それは、、、」
加州「ねぇあのおじいちゃんが、どれだけ審神者泣かせてるか知ってる?俺なら、初期刀に選んでくれれば最初から最後の時までずっと主と一緒なのに。」
少し寂しそうに言った加州の言葉には納得だ。
PCからの初回組はもちろん、スマホ移植後でも事前登録をしていなかった途中参加組はレア刀難民が多発している。
そりゃもう、おじぃちゃんが出てこない!と言う歌まで作られるほどだ。
それでも、配布キャンペーンで救済されるより自分の力で手にしたい!と言う思いの強い審神者がたくさんいる。
もっとも自分の場合、キャンペーンにかすりもしなかったのにゲームを初めてすぐ、三日月がそんなに幻レアなのを知らなかったくらい、さらっと鍛刀でやって来たのでほぼ初期刀に近かった。
その為、鶴丸とツートップで本丸を率いていたから、泣かされるどころかたくさんの思い出でいっぱいだ。
「それでも、会いたいよ。、、また、会いたい。」
加州の持つ三日月のストライプを眺めながら、もう戻る事の出来なくなってしまったもう1つの本丸を思うと胸が苦しい。
次に出会う三日月が前の本丸の三日月かどうかなんてわからないけど、全くの別人になっていたとしても、それでもあの美しく優しかったあの人に。