第36章 未定か
薬研「さてと。」
こんのすけの姿が見えなくなると、薬研は真剣な表情で七葉を見つめる。
「薬研さん?」
その視線にいたたまれなくなって声をかけると、突然抱きすくめられた。
「ひゃっ!え?あの!?」
訳がわからず驚き慌てていると、耳元で吐き出すような小さな声がした。
薬研「あまり心配かけてくれるなよ、大将。倒れたって聞いた時、心臓が止まるかと思った。」
「ごめん、なさい。」
その切なげな声と強くなる腕の締めつけに素直を謝ると、薬研はばつが悪そうに言う。
薬研「いや、大将が悪い訳じゃないってのはわかってるんだがな。」
「でも、迷惑かけちゃったから。それに、出陣部隊の出迎えも、ご飯の支度も、何もできてない。」
うつ向きながら呟くと、薬研は締め付けていた腕を緩め、ポンポンとあやすように七葉の背を叩く。
薬研「そんなこと、どうだっていいさ。」
「でも、、みんなの役にたたないと、、、何も出来ない主なんて、いらない。」
咄嗟に吐き出された言葉と共に、七葉の瞳からは大粒の涙がポロポロと零れた。
薬研「おいおい?何も泣くこたねぇだろ?」
こちらを覗きこんだ薬研の表情に、また自分が困らせてしまっているのだと思うと、申し訳なさでいっぱいになる。
「、、ごめっん、、今、止め、、、」
七葉は泣き止もうと目元をぬぐうが、一向に涙が止まる気配はなかった。
「、、何っ、、で、、?」
自分でも何故泣いているのかわからず、困惑しながら何度も目を擦っていると、その手が不意に薬研に掴まれる。
薬研「そんなに擦ったら、目が腫れちまう。」
薬研はそのまま腕をどけると、後頭部に手を添えて顔を引き寄せ、その目尻に口づける。
薬研「無理に止めようとするな。泣きたいなら、泣けばいい。」
「でも、、また、、んっ、、、、」
迷惑をかけてしまうと言おうとした言葉は、薬研の唇に阻まれて音になることは無かった。
慰めるような口づけの後、薬研は唇を離すと、再び七葉を抱き締める。
薬研「なぁ、大将。大将は、いったい何にそんなに怯えてるんだ?」
「、、、、」
答える事は、できなかった。
薬研は、黙ってしまった七葉に苦笑いしつつも、その背をそっと撫でるように擦る。
薬研「まぁ、言いたくなったらでいいけどな。」