第31章 理由
「ふふふ、ありがとう。ところでキツネさんはどうして1人なの?」
頭を撫でながら聞くと、お付きのキツネは目を細めて答える。
お付きのキツネ「本丸を案内して頂いた後、皆さんは温泉に入るとのことでしたので、わたくしめは先に鳴狐に洗ってもらい毛並みを乾かしがてら夜風にあたっていたのですよぅ。」
「そっか、それでこんなにモフモフなんだね。」
手触りの良さを誉めると、お付きのキツネは嬉しそうに話す。
お付きのキツネ「はい、鳴狐もわたくしめの毛並みにはこだわりがあるのですよぅ。何せ普段から首もとに乗っていますので。」
そんな話をしていると、縁側を歩いて噂をしていた鳴狐がやって来る。
お付きのキツネは気配で気づいたのか近づく前に鳴狐に声をかけた。
お付きのキツネ「おや?鳴狐、もう出たのですか?」
本体「うん。」
鳴狐は返事をすると、こちらに視線をやる。
お付きのキツネ「心配せずとも、わたくしめは主殿とお話ししていただけですよぅ。」
本体「ビックリした?」
「うん。」
鳴狐に問われて素直に返事をすると、少し嬉しそうに笑ったのがわかった。
お付きのキツネ「主殿は、毛並みも誉めて下さったのですよぅ。」
そう言って撫でられている姿に、また少し鳴狐の表情が綻ぶ。
本体「、、良かった。」
そう言うと、鳴狐は座っている七葉の頭を撫でる。
本体「、、行くよ。」
鳴狐が声をかけると、お付きのキツネは七葉の膝から降り鳴狐の肩に飛び乗った。
お付きのキツネ「それでは主殿、わたくしめはこれにて。」
「うん。おやすみ二人とも。」
立ち去る2人に声をかけると、お付きのキツネはこちらを振り向き、鳴狐はそのまま軽く左手を上げた。
お付きのキツネ「おやすみなさいませ、主殿。」
本体「、、、、おやすみ。」
2人だ立ち去った後、静かになった縁側で1人外を眺めそろそろ部屋に入ろうと思い立ち上がる。
部屋の障子に手をかけたところで、後ろから声をかけられた。
加州「主。」
その声に少し気まずく振り向けずにいると、加州が言葉を続ける。
加州「薬研に言われたんだ。出陣記録、つけるんでしょ?」
「うん。」
七葉は返事だけして、そのまま近侍部屋の障子戸を開ける。
室内に明かりを灯しお互い向かい合って座ったところで、加州が口を開いた。