第31章 理由
手入れ部屋を飛び出した七葉は、下を向いたまま縁側を足早に自室へと向かう。
近侍部屋の前まで来たところでモフモフした物体が視界に入った。
「あっ、お付きのキツネさん。」
お付きのキツネ「これはこれは主殿ぉ、、、おや?どうかされましたか?」
お付きのキツネは七葉の顔が赤く瞳が得るんでいるのに気付き、下から見上げながら問う。
「ほんとにしゃべって、、、」
お付きのキツネ「ですから腹話術ではございません!と申したではないですかぁ。」
鳴狐の姿が見えないのに聞こえてきた声に驚いていると、お付きのキツネは足元にすり寄りながら言う。
「わっ、わかったよ。あはは、くすぐったい!」
毛並みが足を触れ、筆でくすぐられているような感触に思わずしゃがみ、お付きのキツネを持ち上げる。
そのまま抱き抱え、縁側に腰をおろして膝に乗せると、お付きのキツネは膝の上で丸くなった。
お付きのキツネ「それでどうかされたんですか?」
お付きのキツネの問に、七葉は少し話すのをためらったが口を開く。
「、、、前にね、顕現をした時、体に不調が出たの。」
お付きのキツネ「なんと!では鳴狐を顕現したせいで熱を!」
「う~うん、そうじゃなくて今回はなんともなかったんだけど、薬研が心配だから念のため診察してくれるって言ってくれて、それでさっきまで手入れ部屋にいたんだ。」
お付きのキツネ「ほうほう。では、何故そんな顔を?」
突っ込んでくるお付きのキツネ、七葉は苦笑いしつつ答える。
「その、、薬研があちこち触れるから、恥ずかしくて。」
意識する方がいけないのだろうが、至近距離で綺麗な顔に見つめられ、額や瞼に触れられたり、遠慮なく口内を探られてはたまったもんじゃない。
オマケに濃厚な口づけまでされ、いたずらっぽくからかわれては、顔に出すなと言われても無理な話だ。
七葉が思い出して再び顔を赤らめていると、お付きのキツネは納得したように言う。
お付きのキツネ「そう言えば、薬研殿は昔からなぜか治療となると張り切りますな。ご自身は男らしい性格ゆえ羞恥心など感じたりないでしょうし、配慮が足りず申し訳ありませぬ。伯父である鳴狐に変わりこのわたくしめがしっかり言っておきます。」
保護者のような発言が面白く、七葉は思わず笑ってしまう。