第29章 増えていく粟田口
薬研「そうか?自分じゃよくわからん。まぁ兄弟が多いし、面倒見は良い方だとは思うが。」
「薬研が一番上なの?」
薬研「いや、今のところ兄貴が4人いるな。一番上が太刀の一期一振、次に脇差の鯰尾藤四郎と骨喰藤四郎、後は短刀の厚藤四郎だな。で短刀の弟が9人いる。」
薬研は、指を折り曲げつつ数えてそう言った。
「藤四郎、大家族だね。」
七葉が笑って言うと薬研は誇らしげに続ける。
薬研「まぁな。俺っち達の作者吉光、通称藤四郎は天下の三名工だったからな。有名な武将がこぞって求めたらしいし、依頼された刀も多かったんだろうよ。」
「そうなんだ。」
そう言えば薬研も織田信長のところにいたし、豊臣や徳川に由縁がある兄弟もいるのだろう。
薬研「もともと粟田口は京都の名工だったからな。吉光より前の代の6人兄弟やその息子、兄弟子や子や弟子なんかもいたから兄弟だけでなく親戚もわんさかいるぜ。」
「粟田口一族、すごいね。」
そんな話をしていると、顕現部屋の前までやって来た。
薬研「邪魔するぜ。」
顕現部屋に入り薬研が言いながら鍛刀部屋の戸をあけると、今まさにお団子を食べようと口を開けていた鍛冶職人が、こちらを見てハッとした表情をする。
どうやらおやつ休憩をしようとしていたようだ。
鍛冶職人はあわあわしながらお団子を菓子置きに戻すととてとてとやって来る。
「休憩の邪魔しちゃいましたね、すみません。」
薬研の後に続いて鍛刀部屋に入った七葉が、鍛冶職人にお辞儀をしながら言うと、鍛冶職人は左右に首をふって両手を差し出した。
薬研「確かでかいやつ狙いだったよな?」
「うん。」
薬研「なら、資材は多めが良いんじゃねぇか?」
「そうだね。でも量に限りがあるし半分くらいにしてみようかな。」
七葉はそう言って紙に数字を書く。
「これでお願いします。」
依頼札と紙を渡すと、鍛冶職人がそれを見て時間の紙をくれた。
「1時間30分、、」
薬研「て事は打刀か?」
薬研がたずねると、鍛冶職人はコクリと頷き作業を始める。
薬研「良かったな、大将。」
「うん!誰が来るか楽しみだね☆」
邪魔にならないよう、鍛刀部屋を出て顕現部屋に戻る。
薬研「さて、顕現までには時間があるが、何かしたい事はあるか?」
薬研の言葉にさっきの情景が浮かぶ。