第29章 増えていく粟田口
薬研「で、俺っちに頼みたいことってなんだ?」
出陣部隊を送り出し2人で近侍部屋に戻ると、薬研が口を開いた。
七葉は一瞬ためらったが、直ぐに話を始める。
「実は、鍛治屋さんに鍛刀をお願いしようと思ってて。」
薬研「、、、唐突だな。」
先ほどまで全く話題に出てなかった内容に、薬研は素直な感想を言う。
「うん。函館出陣の後から考えてはいたんだけど、顕現した後立てなくなったでしょ?だから中々言い出せなくて。」
七葉はそう言うと、少し悩んだようにうつ向き目を伏せてゆっくりと瞬きをして話を続ける。
「この本丸は今、短刀以上の子は加州しかいないでしょ?」
薬研「あぁ。」
「もちろん短刀が悪い訳じゃないんだけど、どうしても出陣から加州がはずせなくて。」
刀装が2つ装備できることもあり、そうなるとこの本丸唯一の打刀である加州への負担は増えてしまう。
「それに、今は敵部隊も少人数の短刀や脇差しかいないし問題無く進めてるけど、この先もしも敵が強くなったり人数が増えるなら、部隊編成はやっぱり最大値の6人で組んであげたい。」
七葉の言葉に、薬研は納得したように頷く。
薬研「確かにな。だとすると最低1振り、1人残るなら後2振りは必要ってことだな。」
「うん。だから薬研には、顕現する時に付き添ってもらいたいの。」
申し訳なさそうに言う七葉の頭を、薬研はポンポンとする。
薬研「わかった。ただし、顕現は1振りずつだ。」
「うん、ありがとう。」
鍛刀部屋に向かう途中、薬研は素朴な疑問を口にした。
薬研「しっかし、何でさっきと言わなかったんだ?」
「だって出陣前に、この後鍛刀お願いして顕現するつもり!なんて言ったら加州気になって集中できないだろうし。それで怪我とかしたらもともこもないでしょ?」
薬研「まぁな。でも、黙ってたら黙ってたで逆に気になるんじゃねぇか?」
「うう、確かに。」
七葉はどうしたら良かったんだ~と頭を抱えうんうんしている。
薬研「ま、帰ってきたらちゃんと話してやれよ。加州の旦那も、あれで結構悩むタイプだ。」
「うん。」
もしかしたらさっきの違和感は、それが原因だったのかも知れない。
七葉はそんなことを思いつつ薬研に呟く。
「薬研ってさ、回りをよく見てるよね。」