第25章 お揃い
まさかの発見に、二人して顔を見合わせる。
薬研「コレだな!」
「ね!良かったね!まさか理想のカップが、こんなところにあるとは。」
薬研「そうだな。値段付いてないみたいだが、こいつはいくらだ?」
「ん?あぁ、このお店は値段が付いてないやつはみんな108円だから☆」
薬研「そいつは太っ腹だな。」
薬研は100均の価格に驚きながら言うと、少し考え込み口を開く。
薬研「なぁ、大将。」
「ん?」
薬研「向こうで珈琲を入れたら、大将も飲みたくなるかもだろ?そしたら、大将の分のカップもいるよな?」
「そうだね確か、向こうには湯のみはあってもコーヒーカップは無かったから、湯のみに入れると味気ないし。」
薬研「じゃあ、同じやつを2つ買わないか?お揃いってやつだ。」
「お揃い、、」
ペアな訳でもなく、ただの無地のコーヒーカップを2つ買うだけなのに、その言葉がやけに甘く聞こえる。
薬研「嫌か?」
照れたのを隠すようにうつむくと覗きこまれて、思わず本音が口から漏れた。
「、、、うれしい、かも。」
薬研「そうか。」
薬研は、微笑んで七葉の頭をポンポンする。
薬研「なぁ、さっき特別な時じゃないと、贈り物はいらないって言ってただろ?」
「うん。」
薬研「安物だし、はじめて現実に来た記念ってことで受け取るのは駄目か?」
こんな理由付けまでさせてしまうなんて、つくづく自分は厄介だと思う。
ただ、何かを受け入れるためには必要なのだ。
言い訳にできる何かが、、、
「それなら、、」
薬研「よし、買ってくる。大将は外で待っててくれ。」
薬研は、カップを2つ持ってレジの方へ歩いて行った。
「お菓子、見る余裕無いです。」
七葉は、誰に言うでもなく独り言を呟く。
胸がいっぱいすぎて、しばらく食べ物なんて入りそうにない。
お腹が空いたらしい薬研には悪いが、帰ったらすぐに夕飯にするから待っててもらう。
そもそもこんなに苦しいのは、薬研が優しくするせいだ。
そんなことを思いつつ七葉は、店の外にでる。
愛されるのは、やっぱり苦しい。
でも不思議と嫌ではない理由に、この時はまだ気付いていないのであった。