第25章 お揃い
「あっ、見てみて薬研。Yあった!」
七葉は、まるで何事も無かったかのように先程までとはうって変わって、明るくマグカップを渡してきた。
薬研も、これ以上掘り下げたところで空気が悪くなるだけだろうと、戸惑いながらもそのカップを受け取り、当初の目的に話を戻すことにした。
薬研「ん~、Yは兎も角裏の舟がな。」
見るとそこには、大きなヨットがプリントされている。
「これはね~。薬研のや、じゃなくてヨットのよ、だったんだね。なかなかシンプルなのって探すと無いなぁ。」
そんなことを言いながらカップをもとの位置に戻して店をでる。
すると目の前のお店のホットケーキやパンのクッションやスクイズのキーホルダーが視界に入った。
「薬研、ヴィレバン寄っていい?」
薬研「構わないが、随分とゴチャゴチャした店だな。大将、こりゃ何屋だ?」
薬研はあたりを見回し、狭い通路とところ狭しと並ぶ商品に圧倒されている。
「確か、公式発表は本屋さん。」
薬研「は?」
「うん、気持ちはわかる。」
ぽかーんとしている薬研をよそに、七葉は店の中へと入って行った。
ヴィレッジヴァンガードプラスは、何時間でもいられそうなくらい面白い物が沢山あり、個性派雑貨や変わったら物が好きな人間にはたまらないお店だ。
楽しそうに商品を手にしては、いちいち見せに来る七葉に、薬研はずっとこんな風に笑っていてくれたらと思いながらも、やはり先程の言葉が気にかかっていた。
今朝見つけた本もそうだが、大将は俺っち達に何かを隠している。
しかし、それが何なのか知りたくてもおそらく今のままでは明かしてはくれないだろう。
薬研「さて、どうしたもんかなぁ?」
「ん?」
思わず口から漏れた言葉に、七葉は不思議そうな顔をして聞き返す。
薬研「いや、マグカップも見つからんし、そろそろ腹も減ったなぁと。」
薬研はとっさにごまかし、七葉はそれに納得したようだった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。あっ、帰りに100均でお菓子買って行こ!」
そう言って店を出て、駐車場に戻る途中のダイソーに立ち寄る。
「ここも食器あるし、来たついでに見てみようか。」
七葉の提案で食器売り場を通ると、そこには真っ白で大きなマグカップが置かれていた。
薬研「あっ!」
「あっ!」