第21章 珈琲とイチゴジャム
もうすっかりお馴染みとなった寝間着の浴衣から着替えて部屋を出ると、薬研が壁に寄りかかって待っていた。
一階に降りトースターに食パンをセットし、ケトルに水を入れてスイッチを押す。
フライパンにベーコンをしき、玉子を割り入れ目玉焼きを作りながらレタスとミニトマトをお皿に盛り付けているとカウンターごしに見ていた薬研が呟いた。
薬研「ずいぶん手慣れてるんだな。」
「まぁね、家事歴長いから。」
答えらがらインスタント珈琲のフタを開け、珈琲を入れようとして薬研の分をどうしようか考える。
「私、珈琲入れるけど薬研は飲み物どうする?珈琲か牛乳かオレンジジュース。」
薬研「大将と同じのでいいぜ。」
薬研の言葉に、恐らく薬研は珈琲を飲んだことがないだろうと念のため確認する。
「コレ苦いよ?」
薬研「あぁ、問題ない。」
七葉は、まぁ苦ければミルクと砂糖もあるしいいか、とマグカップを用意すると適当に珈琲の粉を入れお湯を注ぐ。
薬研「いい香りだな。」
「ね!今日はインスタントだけど豆からドリップするともっといいんだよ。」
七葉はそう言うと、焼けたベーコンと目玉焼きをお皿にのせ薬研に差し出した。
「はい、薬研そっち置いて。」
薬研「あぁ。」
トースターからとり出したパンもお皿にのせて渡し、バターとイチゴジャムとカトラリーをダイニングテーブルに並べて、最後に珈琲を置いて朝食が完成した。
「さぁ、食べよ。」
薬研「あぁ、いただきます。」
「いただきます。」
いつものように手を合わせ、朝食を食べ始める。
薬研「ところで大将、こんな優雅に朝飯食ってていいのか?」
バターを塗った食パンをかじりながら、薬研が不思議そうな顔をする。
「あっ、うん。今日は少し家で仕事するくらいで急ぎじゃないから。」
薬研「ならいいが。」
薬研は返事をしながら珈琲を口に運び、なに食わぬ顔で飲んでいる。
「薬研苦くない?」
薬研「あぁ、普通にうまいが?」
平然としている薬研にやっぱりショタ詐欺だ!と心の中で叫びながら七葉も自分の珈琲に口をつけた。
薬研「大将こそ、こんな苦いの平気なのか?」
「ジャムパン食べながですから。」
七葉はそう言うと、イチゴジャムジャムのたっぷりついた食パンをちぎって口に運ぶ。
薬研「なるほどな。」