第4章 恋の試練場
反物屋の主人に、仕立ての腕を褒められ、
愛はとても嬉しくなっていた。
店主がゆっくり選定して良いと言ってくれたので、愛は真剣に1つ1つを見ていく。
待つ間三成は、ニコニコしながら店主の出してくれるお茶を飲んでいた。
『あちらの姫君は、石田様と恋仲なのですか?』
と、店主が訊く。
「いえ、まさか。私のようなものには、もったいないお方ですよ、愛様は。」
少し頬を赧らめて三成が言う。
『そうでしたか…。いや、てっきり。
でも、誰が見てもお似合いのお二人ですけどね』
と、微笑み、
『今日の姫君のあの着物は、きっと石田様のお召し物に合わせて選定されたと思いますよ。
小物に至るまで、石田様の色使いに合わせ、それでいて石田様より派手にはならないように、
非常に考えられていると思いますから。』
「えっ?」と驚き、真剣に悩んでいる愛をまじまじと見る。
なるほど、すみれ色の生地は、自分の着ている深い紫の着物と同じ種類の色を薄めたような色で
そこには、控えめで可愛らしい品のいい椿があしらわれている。
自分がさっき贈った簪は。愛の着物にぴったりだと思って選んだが、
それより先に自分に合わせるように着物を選んでいたとは…。
『偶然では…ないのでしょうか。
でも、確かに私の好きな色味で揃えてくれていますね』
と、主人に笑顔を見せる。
そんな話をしていると、選び終わった愛が2人の元へやってくる。
「これなんか、どうかな?」
と三成を伺う。
愛が持ってきた反物は、紫から水色へ、そして最後は薄い黄色へとグラデーションに色味を変えていく、
春を感じさせる不思議な色味を持っていた。
『おお、此方を選ばれましたか!これは、昨日入荷したばかりの非常に珍しい反物で、
折り目も非常に品の良い一点ものでございますよ。さすが、姫君は選定の眼がありますね』
と、店主は驚きながら言う。
「私は、愛様の選んでいただいたものでしたら、異論はございませんが、
これは仕上がりが想像できず、とても楽しみです」
と、三成は目を細める。