第4章 恋の試練場
『愛様、お腹は空いてないですか?』
城下に入ってすぐ、三成が訊く。
気持ちが晴れてきていたからか、ちょうど愛は空腹を感じ始めていた。
『まだ、食欲ありませんか?』
心配そうに三成が訊くが、
「ううん。ちょっとお腹すいてきちゃったな」
ちょっと恥ずかしそうに笑って愛が言う。
『では、今日は冷えますし、温かいものを食べませんか?』
そういうと、一軒の店に入っていく。
店の中に入ると、人の良さそうな主人が笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃ…おお、これは石田様お久しぶりで御座います。
おや、今日はまた素敵な姫君をお連れでございますね。さぁ奥の座敷へどうぞ」
そう言うと、ニコニコと案内してくれる。
座敷に通され、落ち着くと
「素敵なお店だね、お知り合いなの?」と愛が訊く。
『ここは、安土に来て初めて信長様と秀吉様にに連れてきて頂いたお店です。
それから、何度も秀吉様には連れてきていただいてますが、
私が誰かをお連れするのは初めてなので、ご主人は驚かれていましたね』
と、クスクスっと笑いながら三成が言う。
『何を食べても、とっても美味しいですよ』
と、嬉しそうな三成を見て、愛も自然に笑顔が溢れる。
「そうなんだね、ありがとう、三成くん」
愛は、三成の大切なお店に連れてきて貰えたことが素直に嬉しいと思った。
三成は、店の主人に注文をまかせる形でお願いし、
この後はどういう所に行きたいかを愛に問う。
『愛様は何がお好きなのですか?』
(ジャンル問わずかな?)
三成のザックリした質問に少し考えてから、
「服を…着物を作ったり、着飾ったりする道具を作るのが好き」
そう言うと、三成は妙に納得した顔で
『だから今日のお召し物も素敵なのですね。もしかして、ご自分で仕立てられたのですか?』
少し照れながらも、
「うん。女中さんが、自分は要らないから…って何個かくれた反物がとっても素敵で…
時間も沢山あるし自分で何着か仕立ててみたんだ。」
『それは素晴らしいですね!今度、私も羽織をお願いしたいです』
三成がそういうと、愛は嬉しそうに「是非作らせて!」と、笑った。