第4章 恋の試練場
そこに現れたのは、見た事もない髪の結い方をして、
薄く化粧をし、新しい着物と、それにセンス良く合わせた小物を身に纏う愛。
愛の着物は、三成に合わせたものだという事は、広間の廊下から見ている全員がすぐにわかった。
「ほぉ…やるではないか。」
「あいつは着物などに良い選定眼があるのだな」
と、信長と光秀がニヤリと笑えば、
「何だよ、あの緊張感のない顔は…」
「三成…」
と、力のない声を出す、政宗と秀吉。
「…なんで、手繋いでるの…」
家康は1人はっきりと嫉妬を口にした。
「面白いものを見たな」と信長が元の位置に戻ると、
秀吉が足取り重く戻る。
ぞろぞろと広間に戻る中、光秀が秀吉の肩をポンポンと叩く。
『兄貴の仕事をしてる間に、1つ先を越されたな、弟に』
と、ククク…と笑う。
そんな光秀は、
(やはり、陽には陽が似合うものだな)
と思っていた。
「ただ、城下に行くだけで、大袈裟…」
家康の機嫌悪い呟きに、
「全くだ。くだらねぇ」
と、珍しく政宗が同意する。
何となくどんよりした広間の空気を、
信長は少し呆れて見ていた。
(貴様ら、三成にひとつ抜かれた意味をしっかりわかれよ…)と。
場内でのひと騒動を終えて、愛と三成は城下に向かい歩いている。
「ごめんね、いつも通りにして来たら良かったよね。
なんかちょっと浮かれちゃって、気合い入れすぎちゃった…。」
女中や門番もだが、秀吉の仲の良い家臣にも見つかり、兎に角持て囃された。
言われた三成は、何も感じていない様子。
『良いじゃないですか、皆さん褒めてくれたんですよ?
皆さんの気持ちがわかります。この姿の愛様と出かけるのが、
自分で良かったと、心の底から思っていますから』
と、愛を和ます、天使のような笑顔で三成が話す。
『今日は、信長様直々に、愛様に安土の城下の魅力をお教えするよう言われております。
一緒に思う存分楽しみましょう!』
そう言うと、繋いだ手に少しだけキュッと力が入った。
「ありがとう、三成くん。私も楽しみ!
今日は宜しくお願いします!」
(【一緒に楽しみましょう】という言葉に、本当に心がほっこりするな…)
愛も少しだけ手に力を込めて握り返し応えた。