第4章 恋の試練場
三成が愛を連れて、城を出る。
まず女中達が騒ぎ始める。
『石田様、愛様、とっても素敵です!お気をつけて』
愛付きの女中が興奮気味に声を掛けると、他の女中も手を止めて2人を見る。
普段から、色気があると、女中の中では人気の三成が連れているのは、
普段は下ろしている髪を半分結いあげて、薄めの化粧をし、
三成の着物に合わせて菫色に赤い椿があしらわれた着物を着ている愛。
「美男美女ね〜、素敵だわ〜」
「お似合いのお二人ね〜!」
などと、あちこちで感嘆の声が上がっている。
なにか騒めきを感じた秀吉が、近くの女中を捕まえて
『何事だ』と訊く。
「今、石田様と愛様がお出掛けになられたのですが、
石田様は勿論ですが、愛様が着飾っておられまして、
本当に素敵なお二人でしたので、女中たちが騒いでしまったのです、
申し訳ありません。でも、本当にお似合いのお二人で、まるで石田様の姫様でした。」
と、少し興奮気味に話す。
「まだ今なら城門に辿り着くかどうかですよ?」
と、秀吉にも見てみろと促す。
一緒に聞いていた政宗は、
「ほぉ。」と言うとすぐ行動に出る。
広間のから直ぐの廊下へ出て、城門近くが見渡せる場所に移動し、2人が出てくるのを待つ。
『出てきたか?』
政宗に声を掛けたのは、いつの間にか政宗の後ろまで迫っていた信長だった。
「いえ。まだです。」
政宗がそう言うと、
『貴様らも、気になるなら見ておけば良い』
と、広間に声をかける。
最初に立ったのは家康
「…面倒くさい…」
呟きと行動が一致してない家康に、光秀がククっ…と笑う。
家康の後を、秀吉と光秀が追う。
ちょうど全員が城門を見られる位置に到着した頃、外が少し騒がしくなった。
門番と話す声が聞こえてきて、
「行ってらっしゃいませ」という声が次々にする。
武将たちがでかける時でも、こんなに沢山の声がかかる事は少ない。
「来たか…」
信長の呟きと同時に、三成に手を引かれて城内に向かって
「行ってきます」と笑っている愛が見えた。