第4章 恋の試練場
佐助が食べ終わると、愛はお茶を入れる。
「佐助くん助かったよ。ありがとう。」
『此方こそご馳走様。愛さんの今日の予定は?』
お茶をすすりながら佐助が訊く。
「今日は、午前中の軍議が終わったら、三成君と城下に出かけるの。」
それを聞くと、佐助は相変わらずお茶をすすりながら、
『そうか…今日は三成さんとデートなんだね。』
愛は自分のお茶をプっと吹き出す。
「デ、デートって!そんなんじゃないって!変な事言わないでよ…」
ただ居心地の良い三成と出かけるという事だけを考えていた愛は
改めてデートと言う感覚は一切なかった。
『ゆっくり楽しんでくるといい。三成さんになら、僕も癒されてみたいな。』
頓珍漢な話になってきたと思っていた矢先、
佐助が俊敏に立て膝になる。
『愛さん、朝ご飯にお茶ご馳走様。
今日はこの変でお暇するよ。デート楽しんできて!ドロン』
愛は佐助の分の湯呑みをさっと片付けた。
その直後、襖の外で女中の声がする。
『愛様、石田様からの言伝で、あと半刻ほどでお迎えに参られるそうです。』
「 わかりました。準備しておきますと伝えて下さい」
そう言うと、着替えをしようと着物を選ぶ。
「佐助くんが変な事いうから、ちょっと意識しちゃうじゃない…
でも、折角のお出かけなんだから、たまにはそういう気分でもいいかな。」
そういうと、三成の事を思い浮かべ、同系色の寒色のものを選ぶか、
相反した暖色系で行くかを真剣に考え出した。
(この着物になら、小物は…)
すっかりデートモードの気分に切り替わった愛は、
さっきまでのモヤモヤをすっかり忘れて、
久しぶりに1人の女の子として、お洒落をし始めたのだった。