第4章 恋の試練場
「はい」
三成が信長の言葉を待つ。
『貴様は今日は愛と一緒にいるのだな?』
朝食の際の会話を全員が思い出している。
「はい。数日前に愛様とお約束致しました。
私の仕事に時間が取れそうな時にお連れすると。
今日はその約束が果たせそうだったので、昨日お伝えいたしました」
『そうか。』
と言うと、口元を少し綻ばせ、
『存分に楽しませて来い。安土の城下の魅力をしっかり伝えるのだぞ。
安土には、美味い物も沢山ある。色々な店に顔を出せ。わかったな。』
思いがけない信長の言葉に、一同は驚きを隠せない。
ただ1人、当の三成だけは、いつもの笑顔で
「かしこまりました。愛様をお腹いっぱいにして差し上げます!」
と屈託なく答える。
『あいつ今日食欲ねーだろうよ。朝餉だってあんなに残して。』
その会話に政宗が面白くなさそうに入ってくる。
三成は少し思い出すように考えたのち、
「そうですね…ということは、やっぱり沢山食べられますね!」
と、政宗に笑顔を向ける。
そこに追い打ちをかけるように、信長は
『三成、明日からの愛の食事はお前が愛の部屋に運んでやれ。
よし、軍議を始めるぞ。今日は三成を早く出すから手短に行く。』
キョトンとした三成だったが、素直に
「かしこまりました。」
と答え、他の3人の棘のような苦々しい視線には一切気づかず、
直ぐに参謀としての顔に変わったのであった。