第4章 恋の試練場
その頃、政宗は酷く落ち込んでいた。
「なんで残すんだよ…」
愛に料理を作ってやって、残されるのも初めてだったが、
落ち込む原因はそれだけじゃない。
「あいつ、笑わなかったな…」
ボソッと呟く。
いつもなら、美味しいと言いながら満面の笑みを見せるのに、
今朝は、感想も無ければ、ずっと俯いて浮かない顔をしていた。
そしてその殆どを残していたのだ。
自分の料理だったら、幾らでも愛を笑顔にできると思い込んでいた政宗には
今朝の全てが衝撃で、胸を抉られる思いだった。
そこへ、天守から自室に戻る途中の愛を見つけた。
(こうなったら、理由は本人に聞くまでだ)
そう思い、追いかけようとした矢先に、
『政宗さん!』
家康に呼ばれた。
家康の声に気づいた愛が此方を見れば、
ハッとした顔を見せたかと思うと、小走りに廊下を行ってしまった。
「なんだよ、家康!」
苛立ちを隠さずに文句を言う。
『信長様がみんなを呼んでるんですよ…。つかまらなかったのあんただけ。』
「そうかよ…」と諦めたような声で言うと、
大人しく家康の後を追う。
(すみませんね、政宗さん。本当に招集かかってるけど、
何より、今あんたを愛に会わせるわけにはいかないから)
愛以外、全員揃った広間に信長が入ってくる。
「おそいな…愛を呼んできましょうか」
と、秀吉が立ち上がろうとするのを信長が制する。
『かまわん。愛は呼んでない。』
家康以外が、え?と言う反応をする。
『軍議に入る前に言っておく事がある。
暫く愛は此処へは呼ばぬから、声かけもしてやらなくて良い。』
「ですが…」何かを言いかけた秀吉を遮るように、
『秀吉、貴様は朝餉の声掛けにも行くな。
暫く愛は此処では飯を食わせないことにした。』
光秀は
「成る程な…」
と察したように呟く。
「何が成る程なんだよ!」
秀吉が光秀に声を荒げる。
『喧しいな秀吉。黙っていろ』
「はっ…!申し訳ございません。」
『各々、何でかは自分で考えろ。この話はここまで…
あ、いや。三成』
突然自分が呼ばれると思っていなかった三成は少し驚いて、
しかし冷静な声で返事をする。