第4章 恋の試練場
声を荒げたかと思うと、すぐに弱々しい声で
「本当に…辛いんです…。」
そう言うと、ポロポロと涙を溢す。
『わかった。貴様の好きにするが良い。』
まだ笑みを残したままで、信長は続ける。
『但し、貴様は間違っている。理由がわかったら、
またあやつらの元へ戻って来い。
貴様が嫌なら、夕餉も無理して広間で取らなくても構わん。
皆には俺がそうさせたと伝えておくから気にしなくて良い。』
愛は顔を上げて、少し微笑み、
「ありがとうございます」
と頭を下げる。
『1人で食べても味気なければ、三成を行かす。
いつでも呼んでやれ。
心が静まるまで、此処にいて良いぞ。』
そう言うと、愛の肩にポンと一回手を置き、
先に天守を去った。
駄目だと言われる事を覚悟していた愛は暫く放心状態だったが、
いつもは怖いと思う信長の柔らかいところに触れられたようで、素直に嬉しかった。