第4章 恋の試練場
すると信長が上座から言う。
『秀吉。朝から愛を構い過ぎるな。
貴様のせいで、どうせ遅くなったんだろう?
最近お前が迎えに行くと、愛の顔が暗くなる。』
「…っ!申し訳ございません…」
秀吉はずっと気にしていた事を信長に改めて言われた事で
胸がギュウと捻られる感覚を覚えた。
「そ、そんな、暗い顔なんて!
秀吉さんには感謝しています。私の支度が遅いからです。」
決してそんな事はないのだが、自分のせいで秀吉が怒られている気がして
愛は居た堪れなくなり、そう告げる。
『まあ良い。早く座れ。』
信長に促されて、愛は迷いもなく家康と三成の間に座る。
「い、家康さん、おはようございます…」
様子を伺うように挨拶するが、機嫌はすこぶる悪い様に見えた。
『おはよ…』
冷たい挨拶が返ってくる。
(怖い…)
怯えている愛に、天使は話しかける。
「愛様、おはようございます。
昨晩はよく眠れましたか?」
三成が屈託のない笑顔で愛に話しかけると、
愛はやっと心が落ち着けたとばかりの笑顔で返事をする。
「おはよう、三成くん!
うん、とってもよく眠れたよ?ありがとう」
その満面の笑みで話す様子を、向かいの光秀の隣に座った秀吉は
なんとも複雑な気持ちで眺めていた。
(絶対俺は嫌われるようなことしたんだな…。
でも、さっきは愛が一生懸命取り繕ってくれたが。わからん…)
反対隣の家康は、ニコニコと話す隣の2人に苛ついていた。
(なんなの、これ。気に食わないにも程がある。
俺との挨拶と違いすぎ…)
秀吉の隣で光秀は、この光景に口角の端でクク…と笑いながら、
『秀吉、何があった。お前実は、全然愛を構えてないんじゃないか?』
と人の悪そうな顔で核心をついてくる。
「秀吉、俺もそれは気になってたぞ?後で詳しく聞かせろ」
いつの間にか秀吉の反対隣に座った政宗が、秀吉に顔を近づけて言う。
『ほっとけ…。」
それ以上、秀吉は何も言わなかった。
『さぁ、愛、お前の事だから朝から腹空かしてるんだろ?
今日の朝餉は俺が作った。いっぱい食べろよ!』
そういうと、女中が皆の前にお膳を運んでくる。