第4章 恋の試練場
最近、愛は全員が集まる広間が苦手だった。
(なんか凄く空気がピリついてるんだよね…気が重いな…)
昨日は嫌な事ばかり続いていた。
光秀の揶揄いが終わったら政宗のキス事件。
三成に話を聞いて貰えば、それを見ていたきっと自分の事が嫌いであろう家康の冷たい視線…
そして何よりも…
(はぁ…また始まる…)
秀吉で始まる1日…。
毎朝秀吉は愛に朝餉だと声をかけにくるのだが、
今日一日の注意が永遠と続く。
『愛、わかってると思うが、政宗と光秀には気をつけろよ?
今日はかなり冷えそうだから、外に出るときはあったかくすること。
水も冷たいだろう。掃除手伝うんだったら、終わった後は家康の軟膏塗って
赤切れにならないようにしろよ?
それから……』
だいたい、朝餉を食べられるようになるまで、30分はかかる。
とっても大切に思って貰っているのは十分承知だ。
沢山甘やかしてくれている。
でも、もし万が一、注意事項を守れてなかったところを秀吉に見られたら。。
そう思うと、なるべく日中は秀吉を避けてしまう。
何かと手伝ってくれようとするけど、忙しい合間を縫ってやってくれるから
申し訳ないという気持ちも大きい。
そして、ここ最近は、朝の注意事項の一項目目に出てくる2人からの、
困り果てる揶揄いが多く、絶対に秀吉にバレるわけにはいかないのだ。
『…というわけで、わかったか?愛。
わかったら、早く広間に行くぞ?』
「はい…。」
消え入りそうな声で返事をし、ため息まじりで俯きながら秀吉の後ろを追う。
秀吉は、ふと、自分に距離を置いて歩いている愛をチラと振り返る。
(やっぱり、おかしいだろ…。
愛は今朝も苦笑い程度の笑みしか見せてない。
こんなに距離も開けるし…。もう少し様子見るか。)
秀吉もまた、最近避けられているような気持ちを抱えて
もやもやしながら広間に到着した。
広間には、政宗以外の何時もの面々が揃っていた。
「おはようございます…。」
まだ晴れ上がらぬ顔で、愛がおずおずと入ると、
『遅い…』
と家康が呟いた。
「ご、ごめんなさい、私が早く歩かないから…
みなさまお待たせして申し訳ありません…」
(家康さん、顔が怖い。私の事相当嫌いなんだよね…)