第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)
ちゃぽん…
湯船に浸かりながら、佐助の手紙を思い出していた。
(私のいた時代と繋がるのは最後…か。)
顔の半分をお湯につけ、ブクブク…と息を吐く。
もう、家康の側にいない人生なんて考えられない。
だから、戻りたいなんて思わないし、
戻る理由もない。
(ちょっと怖いな…もし巻き込まれちゃったら…)
戻ってくるチャンスがない事はない。
それでも、500年の時を超えるという、
普通ではあり得ない現象だ。
全てが佐助の計算通りという確証はない。
(信じてないわけじゃないけど…)
できれば、明日知りたかった。
今日はご飯も食べてないし、寝不足だし、
頭回らないよ…
じゃぼんっ!!
湯船で寝落ちしてしまった。
「うわぁ!」
(びっくりした…!
マズイマズイ…
このままじゃ、本当に寝てしまう…
上がろう。。)
そうして、湯を上がろうとすると、
『全く…何やってるの…』
見上げると、呆れた顔が覗いていた。
「い、家康!
なんでここにいるの?」
『文を置いてきたのに、
中々来ないから迎えに行ったら、
湯浴みしてるって聞いたから…
湯浴みなんて、うちの御殿ですればいいのに…』
そう言うと、少し顔を紅くして目を背ける。
(家康、かわいい…)
「ごめんね、実は昨日ちゃんと入れなかったから、
サッパリしてから行きたかったの。
すぐ上がるから待ってて!」
『わかった…』
そういうと、家康は湯殿の戸を締めた。
風呂から上がり、自室に入ると、
家康が待っていた。
『おかえり…』
そういうと、胡座の上をポンポンする。
「え?」
『…髪。
風邪ひくよ。』
意味を察した愛は
俯きながらおずおずと家康の中に背を向けて収まった。
無言で愛の髪を手ぬぐいで拭いてくれる。
「家康?」
『…何』
クルッと振り返ると、
愛は家康の頬にチュっとキスをする。
「おかえり!」
そう言うと、またクルッと前を向いて俯く。
後ろでは、急な出来事についていけない
家康が、真っ赤な顔で驚いている。
『もう…まったく…』
(可愛すぎるだろ…)
そう言うと、後ろからギュッと愛を抱きしめる。
「ひゃっ!」