第1章 ワームホールはすぐ側に(家康)
(ボールペン!
久しぶりだなぁ。やっぱ見やすい)
この時代の文に、悪戦苦闘していた愛に
久しぶりにスラスラ読める手紙は嬉しかった。
「え!」
そこに書いてある内容は、
確かに愛にとってはもう関係ない事。
それでも、改めて言われると、やはり色々と考えさせられた。
その内容とは…
親愛なる愛さんへ
毎日忙しそうだったので、今日は手紙を書くことにした。
愛さんには、横書きの方が見やすいでしょ?
久しぶりにボールペンを使ってみたよ。
まぁ、前置きはこのくらいにして、
実は、ワームホールについての話なんだ。
もう、この時代で生きていくと決めた僕らには
なにも関係ない話ではあるんだけど、
僕の研究結果の報告くらいに思っていてくれれば助かる。
この時代と、僕らのいた時代を繋ぐワームホールは
あと一回だけしか繋がらない可能性が出てきた。
それは、これを書いている今日から3日後だ。
日にちでいうと、27日という事になる。
その時を過ぎると、もうこの時代では向こう100年以上
ワームホールが出来ることはないようだ。
また、現代からこの時代に繋がるのは、
その更に4日後、今現在の暦でいえば、2月1日。
ただし、平成の同じ日付に到着するとは言い切れない。
だから、もし今回のワームホールで現代に戻ったら
その4日後が戻ってくる最後のチャンス、
という事になる。
但し、こちらは絶対とは言い切れない。情報が足りずに計算がきちんとできていない。
なんで、こんな事を書いているかというと、
ワームホールのできる場所なんだ。
どうやって計算をしても、
愛さんを追いかけているようだ。
だから、あえて教えておいた。
帰るつもりがない愛さんが巻き込まれないために。
別に、戻りたいと思わないだけで大丈夫だ。
外に出なければなんの問題もない。
きっと、その日は嵐が来て、雷鳴が鳴り響く。
通り過ぎるまで、じっとしていればいいだけだ。
念の為、当日は愛さんの近くに
いるから安心してくれ。
では、また明日。
佐助
読み終えて愛は、ひとつため息をついた。
ふぅ〜…
なんか、スラスラ読めるのも心臓に悪いな…。
「よし、お風呂入ってこよう。」
そう言うと、湯殿に向かう。