第4章 恋の試練場
〜光秀〜
愛という女子は、なんとも揶揄い甲斐のあるやつだ。
秘密裡に仕事をすることの多い自分でさえ、
時に愛の笑顔で安らぎたいと思うのだから、
他の奴らが放っておくわけがないだろう。
あいつの困った顔を見るのがたまらなく愉快な気分にさせる。
顔を合わせるたびに揶揄われるのだから、そろそろ慣れてもいいようなものだが…
いちいち求めている反応するのだから、こんなに愉快なことはないだろう。
秀吉には、愛に近づくなと散々言われるが、
あの兄貴気取りが、やきもきしているのも含めて俺を楽しませてくれる。
政宗と自分が要注意人物として見られているようだが、
しかし…俺たちが愛を困らせた後に、最近慰めているのは三成だというじゃないか。
秀吉め、世話を焼きすぎてついに愛に愛想を尽かされたのか?
それとも…
散々いじめてはいるが、愛が憎いわけでは決してない。
むしろ…いや、こんな事を思っても仕方のないことだ。
惚れた腫れたの言う資格は自分にはない。
愛は、俺みたいな者にはまぶしすぎる。
せめても…そうか、せめて揶揄っていることが救いなのか。
改めて思い知ると、我ながら情のないものだ。
だが、やはり他の男に誑かされているのは少々気にくわない。
愛、お前は俺にだけ揶揄われていればいいのだ。
そして、もっとその困り顔を見せろ。
不思議なもので、こんなにされてまで愛は自分に悩みを打ち明ける事がある。
どういうつもりかわからないが、そんな時くらいは見たまま、思ったままの事を、
愛には話す。
その時だけは、自分の言葉が愛の役に立ち、曇っていた顔が晴れやかに笑う様をみたくなる。
だが、気をつけねばなるまい。
そこに温もりを求めるような事を願ってはならないのだ。
愛にはいつまでも笑っていて欲しい。
俺のような男が無闇に手を出して良い相手ではないのだ…。
悔しいがな…。