第25章 合わせ鏡(三成)
「私は貴女の新しい顔を知れる事が本当に幸せで…
何年経っても貴女の事が知りたくて仕方がないのです。
貴女が見たいもの、欲しいもの、知れば知るほど幸せに包まれる。
だから、これからももっともっと貴女を知りたいのです」
三成は艶やかな笑みを浮かべながら優しく愛の髪を梳く。
「それが…私にとってこの上なく幸せなのです。
私にだけ見せてくれる笑顔が増えれば増えるほど」
そして一瞬その顔が拗ねたように歪んだ。
「今朝、貴女が信長様から頂いた髪留めをしているのをみて
私は…腹の底から湧き上がるようなモヤモヤとしたものに包まれて…」
「えっ?」
「とても似合っていたんです。
とっても可愛かった…だけど…すみません…」
そう言うと、少しだけ目を逸らした。
「三成くん…ごめんね?
私が…ちゃんと気持ちを考えてあげられなくて…
でも、何を身につけても、誰といる時でも
私は三成くんを…」
「わかっています」
三成は愛の言葉を遮った。
「でも…私が未熟だから…」
「え?」
「愛様は、私にもっと我儘になれと
おっしゃいましたが…」
「うん…」
「でも、違うんです。どんなに愛様の気持ちをわかっていても
満足なんてきっと一生かかってもできないでしょう。
歳を重ねて、貴女と本当に離れなくてはいけなくなるその日まで
ずっとずっと貴女だけを知りたい…ね?私は自分の幸せのためには、
とても我儘で貪欲でしょう?」
思いがけない想いを伝えられた愛は
頭で理解するより先にその目から熱いものが溢れた。
「三成…くん…」
「だから、もし貴女が私の幸せを願ってくれているのなら
これからも愛様のしたい事、見たいもの
どう言うことで喜ぶのか……全てを教えていただけないでしょうか」
三成は壊れ物を扱うような優しい手つきで愛の涙に触れる。
(ああそうだ……この人はこう言う人だった…
私の好きなこの人は、自分の優しさに気づかないほど優しい人だったんだ…)
「三成くん…うん。全部教える。もっと知ってほしい…」
頬に触れた暖かい手に自分の手を重ねた。
「…どうしてでしょう…貴女が私を想って微笑んで下さる…
それだけで胸が締め付けられて、泣きたくなってしまう…」