第25章 合わせ鏡(三成)
宿屋にたどり着いたのは、もうすぐ陽が沈む頃。
部屋に案内された愛は火鉢のそばに座った。
「三成くん、ここあったかいよ!はやくはやく」
はしゃいだような愛の姿に
三成は微笑ましそうに目を細め側による。
「ふふ… 愛様楽しそうですね」
愛の隣に腰を下ろすと、そのまま腰を抱き寄せた。
「…っ!み、三成くんは楽しくないの?」
「もちろん楽しいですよ、貴女が楽しそうなので」
そう言うとにこにこと愛の髪を梳く。
「とても似合ってます…その髪飾り。
やっぱりそれにして良かった」
しゃらん…
指先で飾りに触れる。
(すごく気に入ってるのかな?三成くんの方が嬉しそう)
もちろん自分も嬉しいけれど、
それ以上に執拗に髪飾りに拘った三成が不思議だった。
「愛様…」
茶屋で見た、熱をもった視線を再び浴びる。
『失礼します』
バッ…
「は、はーい」
慌てて三成から距離を取ると、宿屋の女将を招き入れる。
(愛様…)
一瞬にして自分から愛のぬくもりが離れた三成は
言いようのない不安な気持ちに襲われていた。
女将の話は何一つ耳には入ってこない。
ただ、目の前で笑顔で女将と話す愛を
ぼんやりと眺めていた。