第25章 合わせ鏡(三成)
『ありがとうございました。またご贔屓に!』
満面の笑みの主人に送られて店を出たのは
それからだいぶ経ってからだった。
「三成くん…疲れちゃったんじゃない?」
心配になって聞いてみる。
「え?なぜですか?とても楽しかったですよ。
愛様を一番…」
そこまで言いかけて三成は言葉を濁した。
「え?」
愛は急に言葉を止めた三成を不思議そうに見上げる。
「あ、あそこに茶屋がありますね。
愛様もお疲れでしょう。少し休んでから行きましょう」
誤魔化すようにそういうと、愛の手を引き茶屋へと向かう。
(今日の三成くんは…よくわからない…かも)
愛は黙って三成について行く。
茶屋で甘味とお茶を頼み、少し離れた外の席へと座る。
「愛様、早速つけていただけますか?」
三成はそういうと、先ほど買ったばかりの髪飾りを懐から取り出した。
「うん…凄く綺麗…」
最終的に三成が選んだ純連の花をあしらった髪飾りは
綺麗な垂れ下がる装飾がついた
通りすがりに買うようなものではなく、かなり高価なものだった。
「いえ、いいんです。私がこれが良かったんですから」
そういうと、静かに愛の髪に飾り付ける。
しゃらん…
愛が首を傾げるたびに、飾りが揺れる。
「……」
(これは…想像以上に…)
「どうかな…似合う?」
何も言わずにじっとしている三成に、
いたたまれなくなって声をかけた。
照れ臭そうに頬を染めて自分を見つめる愛に
今すぐ口付けたい衝動に駆られる。
「愛様…」
愛は熱を帯びた瞳に見つめられ動けなくなる。
『おまたせしました』
売り子の娘がやってきて声をかけた。
「あっ、ありがとうございます」
咄嗟に三成から視線を逸らすと、慌ててお礼を言って受け取った。
「三成くん、おいしそう!食べよ?」
「は、はい…食べましょう…!」
(私は…今何を…こんな場所で…)
お互いに頬を染めて、二人は黙々と甘味を頬張った。