第25章 合わせ鏡(三成)
「うーん…」
何度目かわからない手をとめながら
無意識に唸り声をあげる。
季節はすっかり冬の匂いに包まれた一年の終わり間近、
愛は三成とクリスマスに何をしようかとずっと思案中。
『ちょっと…また手が止まってるんだけど』
「え…あ、ごめん…」
静かな空間に響いた家康の不機嫌な声に
慌てて手を動かす。
『あんた、昨日もそんなんだったけど、
やる気ないなら帰っていいけど?』
家康の手伝いで薬の整理をしている愛は
時々こうして上の空になる事がしばしば。
「ご、ごめんて…ちゃんとやってるから」
『そう言いながら、何回俺に怒られれば気がすむの』
「すみません……あ!ねぇ家康ちょっと相談に…」
『いやだ』
言い切らないうちにバッサリ断られた。
「えぇ…まだ何も…」
『あんたが何を悩んでるかなんて、聞かなくてもわかる』
家康はそう言いながら、思い出すだけでイライラする相手を思い浮かべた。
「そうだよね…」
思いのほかションボリしてしまった愛を見て
家康は大きくため息をつく。
『はぁ……あんたさ、よりによって俺に聞かなくたって
秀吉さんとかに聞けばいいんじゃないの?』
「う、うん……でも、もう相談したんだもん…」
『で?それなのになんでまだ悩んでるわけ?』
目も合わせずに薬作りをしている家康をチラっと見る。
「うーん…大丈夫…」
そう言うと、愛も再び手を動かしはじめる。
『はぁぁぁ……』
その様子に家康は再び大きなため息をついた。
「そ、そんなにため息つかなくても…」
『何が大丈夫なの?大丈夫ならいつも通りバカみたいな顔で
ヘラヘラしてればいいでしょ』
「ば、バカみたいって…」
ついに家康は手を止める。
『もう、さっさと言って。
ずっとそんなんでいられると、こっちも迷惑。
すごい癪だけど…』
最後は聞こえるか聞こえないくらいの声で呟く。
「三成くんて何したら喜ぶかな…」
『は?なにそれ、今更…』
冷たくしか言えない自分にも腹が立ちながらも
三成のために悩み続けてる姿も見たくない。
家康はそんな葛藤を抱えながら愛に話を促す。
「そうだけど…
秀吉さんに相談しても、私が考える事ならなんでも喜ぶって…」