第24章 麦と真珠(政宗)
「はーーおなかいっぱい!ごちそうさまでした」
満足そうに丁寧に手を合わせる愛に
政宗は柔らかい笑みを向けた。
「いい笑顔だ」
「ふふ…政宗もね。そうだ、着物畳んでおこうか?」
「あぁ、そうだな。大切に着るからそうしてくれ」
愛は衣桁から着物を取ると、丁寧に折りたたみ始める。
「そういえば、その二つ並んだ星は意味があるのか?」
政宗は夫婦星を撫でながら訊いた。
「これはね…」
いつか小夏にした説明を政宗にも丁寧にする。
「へぇ…麦星か、気に入った。俺らしいだろ」
「確かに、食を大切にする政宗にはぴったりだけど…
政宗は私の中では満月の方かな?って思うよ?」
「だめだ」
「え?」
「満ち欠けしてたら、お前と並べないだろうが。
それに夫婦星っていうなら、どう考えても麦星が俺だな。
それにお前の艶やかな肌の白さは真珠だろうが…」
少しムキになってまで主張する政宗に
クスクスと笑いが溢れた。
「笑うな…」
「笑ってないよ……くす」
「笑ってるだろうが」
そんな事を言い合いながら、ふと机に視線が行く。
「…っ!政宗!」
急に焦ったような声を出す愛を不思議そうに見る。
「どうした?」
「ふ、ふ、文が…無くなってる…」
昨日、政宗が読み漁っていた文が一つも見当たらない。
「あぁ、あれならちゃんと全部、宛先に届けておいたぞ」
「えええー!泥棒ー!返してよー…」
政宗の手をパシパシと叩く。
「人を泥棒扱いするな。そもそもお前がちゃんと出さなかったのが悪い」
まったく悪びれる様子もなく政宗が言う。
「うぅぅぅ…あれは…出す手紙じゃなかったのに…」
愛がうなだれる。
「そういえば…何が迷惑になると思ったんだ?
聞く前に襲ったから聞けてなかった」
サラッと言いのける政宗に、
愛はついに観念した。
「迷惑っていうか…慣れなきゃって思ったから…」
「慣れる?」
「うん……。これから先だって何度もこう言う事があるだろうけど
その度に、こんな文書くようじゃ、政宗と一緒にいられないかなって…」
少し寂しそうに愛が笑った。