第24章 麦と真珠(政宗)
「おい、そろそろ起きろ、寝坊助姫」
すっかり陽も上りきった頃、
政宗は未だすやすやと褥に転がる愛に声をかける。
「ん…んん…」
目の前の愛はもぞもぞと裸で蠢いて
無意識の掠れた声を出す。
「おい、そんな艶っぽい声だしてるとまた襲うぞ…」
今度は耳元に近づいて囁くように言う。
「んん…いい匂い…」
寝言のように言う。
「はぁ…お前…」
呆れたようにため息をつく。
「ほら、飯できてるぞ、起きろ!」
今度はゆさゆさと体を揺らして大きな声を出す。
「ん…?ごはん…?」
目をこすりながら、のそのそと目を覚ます。
ぼんやりと目を開けると、そこには大好きな政宗の顔があった。
「政宗っ」
ぎゅぅぅぅ。
突然首に抱きつかれて、目を見開く。
「お、やっとお目覚めだな?ふっ…」
ぱっちりと目が合う。
「お腹すいた…」
抱きついたままの愛をずりずりと褥から引きづり出す。
「ほら、飯冷めるぞ…ちゅ…」
そう言うと、触れるだけの口づけを落とす。
「まぁその前に…なんか着ろ」
クスクスと笑っている政宗の言葉に自分の身体を見る。
「わっ…」
慌てて着物に手を伸ばすと身体を隠した。
「今更隠さなくてもいいだろ?月明かりで存分に…」
「すとーっぷ!いいから!それ以上言わないでっ」
顔を赤くし、慌てて着物を纏う。
「なーに思い出してだんだか?」
先に膳についた政宗が笑う。
「ほら、早くこっちこい」
優しい顔でポンポンと隣を叩く。
恥ずかしそうにしながら隣の膳につくと
「わぁ、政宗が作ってくれたの?」
と、目をキラキラさせる。
「よくわかったな。お前がぐーすか寝てる間にな」
誇らしげに言う政宗を可愛いと思ってしまう。
「そんなのすぐわかるよっ!いただきまーす」
もぐもぐもぐ……
「おいひぃ〜。やっぱり政宗と食べるご飯は世界一美味しいっ」
ニコニコと政宗を見る。
「よかったな、残さず食えよ」
昨日の褥の愛と、ご飯を口いっぱい頬張る愛は
本当に同じ生き物なのか……そんなことを思いながら
政宗もこの時間を楽しんでいた。