第24章 麦と真珠(政宗)
「お待たせしまし…た?!
わわわわ!!だめーだめだめ!!」
髪を解き、化粧を落とし、夜着に着替えて部屋に戻ると
自分の文机の前で、大量の文を広げている政宗が目に入る。
「お前がここに置いておくのが悪い」
チラと愛を見ただけで、また文に目をやる。
「ねーだめってー!それだめーー!」
愛の抵抗も虚しく、ひらりひらひとかわして
文を読み続ける。
「もう…許して…」
「だめだ…許さねぇ」
そう言うと黙々と文を読み続ける。
愛は諦めきれずに
「あぁ…」
「うぅ…っっ」
と声にならない声を上げていた。
「政宗ってばぁ…」
漸く涙声の愛に向き直ると、
政宗は文を片付ける。
「なんでこれ寄越さなかったんだよ…」
読めば読むほど、心を鷲掴みにされる文の数々。
それが戦場に届けられることはなかった。
こうして政宗が見つけなければ、きっと愛は一生渡さなかったであろう文だ。
「だって…政宗の迷惑になりたくない…から」
「迷惑?
これのどこが迷惑なんだ…
寄越してればもっと…」
「えっ?もっと?」
「なんでもねぇ!」
そう言うと政宗は愛を勢いよく褥に押し倒す。
「わ…」
「お前からもらうものに迷惑なんかねぇんだよ」
そう言うと、愛の首筋に噛み付くように口づけを落とす。
「ん…政宗…」
身体を小さく跳ねさせて、喉の奥から甘い声が漏れた。
「どうした…期待してるのか?」
「期待…してるよ……」
瞳を潤ませて、震える声で絞り出す。
「…っ…お前…煽ってんのか…」
「そんな…こと…」
あれから何回目かの満月の夜は
あの日と同じように障子の外から月明かりを照らす。
「なんだよ…そんなことないとは言わせねぇ…」
政宗は夢中で愛の着物を剥ぎ取るように脱がせていく。
「…ん…着たばっか…なのに…」
少し身悶えしながらも、もう抵抗はしない。
ずっとこの温もりを求めていたから。
「優しくなくても…いいよ…」
無防備に口にする。
「お前…いい加減にしろよ…
止まれないからな…泣くなよ…」
そう言うと、月明かりに白く浮かぶ肌を暴いて行く。