第24章 麦と真珠(政宗)
夜更けを過ぎても宴は続いていた。
政宗の元には、次から次へと部下が取り巻いていた。
その様子をにこにこと嬉しそうに眺める愛の元にも
同じように人がひっきりなしにやってくる。
そして、皆口を揃えたように、
戦さ場で政宗がどれだけ素晴らしい采配だったかや
敵将に先陣を切って立ち向かう姿のことなど
自分のことように自慢げに話して行った。
そして、野営のご飯が如何に美味しかったという事を楽しそうに話していた。
「皆さん…戦から戻ったとは思えないです…
部活の遠征じゃないよね…?」
『部活?』
「あ、なんでもないです…
なんだか凄く楽しそうな報告ばかりで…」
すると部下たちは気まづそうに顔を見合わせた。
『実は…途中少し緊迫した場面あったんですよ…
けれど、そういう時ほど政宗様は笑顔で我々の士気を高められて…』
『そうそう。大将自らが我々に野営飯を作るんですよ。
それで、帰ったらこれより美味い飯が待ってるだろうって…
だから、何というか、絶対に全員で帰るんだって気持ちが大きかったんです』
『でも、一番無事に帰りたかったのは政宗様ご自身でしょうね。
なんせ、こんな素敵な姫様を残して来てるんですから』
部下たちは間違いない、と笑った。
「皆さんが…素敵な人たちが居てくれるから政宗は強いんですね。
素敵な話を聞かせてくれてありがとうございます」
愛は心の底からの礼を述べた。
ふと政宗に目をやれば、わいわいと集まる部下たちみんなが笑顔だ。
帰ってきたら、独り占めしたい…そう思っていた気持ちもあった。
けれど、こうやって仲間に囲まれている政宗を見ている事が
とても幸せで、かけがえのない時間だと思えた。
『お前たち、そろそろ政宗と愛を解放してやれ』
突如、広間に信長の楽しそうな声が響く。
そして離れた場所で囲まれている政宗と愛に視線が集中した。
『確かにいつまでも私達が愛様を囲んでいては
あとからどれだけどやされるかわからないですね』
そう口々に言って離れると、離れた場所から政宗が向かってきた。
「それでは、お言葉に甘えて」
政宗がヒョイと愛を横抱きにする。
「わわわ…ちょ、ちょっと…」
「おい、その格好で暴れるな」
ニヤリと笑った政宗はそのまま広間を後にした。