第24章 麦と真珠(政宗)
(やばい!間に合わないっ)
明日には隊が到着する。
試行錯誤の末に、納得のいく刺繍は出来ていた。
けれど、そのせいで着物への仕上げがギリギリになってしまった。
愛は着物を御殿に持ち帰ると
夜通し縫い続けていた。
女中には夕餉はいらないと告げた。
夢中で縫い進めていく。
何が何でも、明日には間に合わせたい。
その思いだけで、必死に針を進める。
後ろの文机には、沢山の文が重ねられていた。
小夏が文を書くたびに、自分も政宗に宛てた手紙を書いていた。
けれど、どうしても書いてしまう一言がその文を出す事を思い留めさせた。
ーー早く逢いたいーー
そんな叶わぬ願いを政宗には届けられない。
命をかけて戦場にいる人に、そんな甘えた事を…
三月重ねられた手紙は無造作に机に重ねられていくばかりだった。
あの日から何度目かの満月を予期させる月が、朝日に変わる頃…
「でき…た…」
寝ずに仕上げたその着物を
部屋にある衣桁にかけると、愛はぱたりと意識を手放した。