第24章 麦と真珠(政宗)
『おい、政宗、早馬しないのか?』
任務を無事に終えた秀吉が珍しく柔らかい顔で話しかける。
「ん?まぁ…別に少しくらい早駆けしても
到着はそんなに変わらないだろ…」
『まーだ根に持ってるのか?』
秀吉は呆れた顔で言う。
結局この三月、愛からの文は一度もなかった。
来るのは日吉宛だけ。
それでも、何度も期待しては裏切られてきた。
「根に持ってるわけないだろ…」
『お前あからさまだな…
まぁお前が早駆けしないことは良いことだ』
「うるせぇ…」
秀吉は、従者が持ち帰った最後の三成からの報告に
隊が帰ることを聞いた愛が、
信長の前で安堵から泣き崩れたと書かれていた。
『まったく…どれだけ不器用な奴らなんだよ』
呆れた笑いを浮かべる。
『帰ったら、優しくしてやれよ?』
意味深に微笑んで政宗を見る。
「はっ?優しくなんてできねぇな。
俺はそんな器量の持ち主じゃねぇんだよ」
不貞腐れたように秀吉から距離を置くように馬を早らす。
『まぁ、ここでどうしたって仕様がないからな』
秀吉は、どちらも拗らせている二人を思って深いため息をついた。