第24章 麦と真珠(政宗)
しばらく馬を走らせ、辿り着いたのは湖だった。
「ほら、ついたぞ」
そういうと自分が先におり、愛を優しく抱えて下ろす。
「今日は落ちるなよ?」
くくっと笑いながら愛の頭を撫でる。
「もう…いつの話してるのよ?」
眉をハの字に下げて愛が笑う。
「俺はいつでもここに来ると思い出すんだよ。
お前のこと…面白くて…いい女だなって思った場所だからな」
「面白いは余計だよ?」
頬をわざとぷくーっと膨らましてみせる。
「余計じゃない。
面白くていい女な愛のことが好きなんだからな」
さらっと好きという言葉を口にする政宗に
心の中から幸せが溢れだしていくのを感じる。
愛は何も言わずに政宗の腕にしがみつく。
「どうした?」
反対に手で愛を優しく撫でる。
「私も…突拍子もない、いい男な政宗が好きって思っただけ…」
心をぐっと掴まれる。けれど悟られないように笑って余裕を見せる。
「ははっ。それはそうだろうな?
こんなにいい男は他にはいないからな」
そういうと、馬に乗せていた包みを取る。
「ほら、茶にするか」
そういうと、包みを開ける。
「わぁ!ずんだ餅!」
さっきまで頬を染めていた愛が
一気に子供のようにはしゃぐ。
(これだから…ほっとけないんだよ)
政宗は木陰に腰をおろし、あぐらをかいた自分の足を
ポンポンと叩いた。
ここに来いという無言のサイン。
愛は、笑顔で頷くと、そこに素直におさまった。
「ほら、口開けろ」
いつもなら自分で食べられると拒否を一度はするところ。
けれど、今日はなんだか素直に甘えたい気分になる。
口をあーんと開けたそこへ政宗は餅を運ぶ。
こうするために、あえて小さく作った。
「うまいか?」
返ってくる答えは分かりきっている。
けれどあえて聞きたい。
「うん!とってもおいひ…」
まだもぐもぐと口を動かしながら
幸せそうに愛が笑う。
(寂しい思いをさせてごめんな…)
そんな気持ちを込めて政宗は優しく愛を抱きしめた。