第24章 麦と真珠(政宗)
「政宗?!」
『政宗様っ!』
針子部屋の面々は驚き口々に名前を呼ぶ。
「どうしたの?軍議で忙しいんじゃ……んんっ!?」
連日、遠征のための軍議が続いていた政宗が急に現れ、
今、なぜか皆の前で堂々と愛に口づけをしている。
ちゅっ…
政宗はわざと音を立てて唇を離した。
「ちょ…ちょちょっと!なっ…何してるのよっ…」
顔を真っ赤にして政宗に抗議の声をあげるが、
当の政宗は面白そうに声をあげて笑っている。
「ははっ…悪いな。
毎日毎日、野郎ばかり見てたから、
お前のそういう顔が久しぶりに見たくなった」
クスクス……
佐江たちは、まったくねぇ…と頬ましそうに笑う。
小夏は余りに大胆な政宗に驚いて目をまん丸にしいる。
「こなっちゃん?こんな事で驚いてたら
これから先仕事にならないわよ?クスクス…」
佐江は小夏の背中をさすりながら話しかけた。
「ちょっとこいつ、借りて行ってもいいか?」
政宗はそういうと、誰の許可を待たずに愛を横抱きに抱えた。
「わわわ…!ちょっと、まだ私仕事の途中…っ」
「すぐに帰す。黙って少し付き合え」
楽しそうに言う政宗に、
「わ、わかったから、自分で歩くから…」
耳まで赤くして政宗に抗議する。
「だめだ。お前は俺の胸で顔隠してろ。
そんな顔で他の男とすれ違いさせるわけにいかねぇからな」
そういうと、政宗は再び佐江たちを向き直り、
「少しだけかりてくぞ」
と声をかけて去っていく。
「はーい、どうぞごゆっくり〜」
慣れたものです…と言わんばかりの見送りの言葉が背中に聞こえた。