第23章 黄水仙(家康)
『愛…』
優しく…一番優しく呼びたい名前。
褥に置いた愛は少しピクってした。
可愛い……
俺が一番愛したいのはあんただけ。
女なんて全く興味がなかった。
強くなるためだけに祝言をあげるんだと思ってた。
しがらみの中で生きるんだと思ってた。
けど…あんたに出会ってしまったから、
俺の人生が変わってしまった。
『責任…とって』
そう言いながら、首筋に口づけした。
ちゅ…
「な…っんの…」
震えながら聞いてくる。
可愛い…
『俺の…全てが愛になった責任…』
ちょっと意地悪く笑って、もう一度口付ける。
今度は少し強めに…
ちゅっぱ…
『もうどこにも行っちゃダメ…っていうしるし付けておいた』
ほのかに色づいた小さなしるしを指でなぞる。
「んっ……」
吐息のように喉を鳴らして愛が震える。
「家康…」
少し甘い声で俺を呼ぶ。
そうやって無意識に煽ってくるのやめてよ…
『なに?』
俺の声も…相当甘いな。
「どこにも行かない…もう家康のことしか考えられないから…」
恥ずかしそうに頬を染めながら目を潤ませる。
あぁ…もう…こんな可愛い動物見たことないから…
ゆっくり肌を露わにして、口づけで花びらを沢山咲かしていく。
俺のってしるし、つけるたびに小さく震えるのが可愛いから。
ちゅ…ちゅる…
ふふ…やっぱ可愛い。
震えながら、俺に全部委ねてくる。
ああ、もっともっと甘やかしておくんだった。
いつでも触れられるところに置いておけばよかった…
『これからは、容赦なく甘やかすから。
今までのぶんも、上乗せしてくから……覚悟してよ』
その日はやっぱり、新しい寝着の出番はなかった。
だって、朝が来るまでずっとずっと愛のこと離さなかったから。
もう、この子起きないんじゃない?っていうくらい
気持ちよさそうに俺の腕の中で寝息を立ててる。
あんまり寝てなかったのに、無理させちゃってごめん…
反省は…一応してるけど…
きっと一生、こうやって甘やかしちゃうと思うけど
それは許してよ
自分にこんな幸せが訪れる未来を
あの頃の俺は知らなかった…
こうやって眠りに落ちる幸せも
知らなかったんだから…
黄水仙 終