第23章 黄水仙(家康)
「きっかけなんてなくても、好きだから一緒にいたいって言えばよかった」
あんたが急にそんなこと言うから
俺の心臓がぎゅぅって鷲掴みにされたみたいになった。
好き……なんだ。良かった。
『俺も…好きだから』
自然に言葉になった。自分でも驚いた。
『これからは、ずっと一緒にいる事』
「ずっと……?」
今度は愛が驚いてる。
『そ。まぁ仕事は仕方ないけど、仕事が終わったら
あんたの部屋はここだから。今日から』
そう言って、触れるだけの口づけをした。
柔らかい…やばい…もう一回したい…
そう思って顔を見たら、またうるうるしてる…
『ねぇ、泣かないで?』
そう言って、溢れそうな瞳に親指を這わす。
『もう…泣かせないから…』
「ちが…ぅ…これは、嬉しい涙だから」
必死に堪えてそう言った。
可愛い…俺はあんたが可愛くて仕方ないんだよ。
だから…着物一枚でも嫉妬するんだ…
「あのねっ」
必死に涙を堪えてた愛が、何かを思い出したように立ち上がった。
ちょっと…今いいとこなのに…なに?
包みを持って戻ってくる。
「これを…家康に」
そう言っておずおずと差し出してくる。
『開けていい?』
愛は少し照れながら首を縦にふる。
俺はその綺麗に包まれた風呂敷を解いていく。
中身が見えた。
『え……これ…』
見覚えがある。というか、忘れるわけない。
愛が一生懸命愛おしそうに皺を伸ばしていた寝着だ。
「それ…家康に作ってたの……。
だけど出来上がったら抱きしめて寝ちゃってたみたいで…」
申し訳なさそうな顔で言う。
「いつも忙しい家康が、それに着替えたらゆっくり休めますようにって
想いを込めて、ひと針ひと針縫ったから…良かったら使って下さい」
あぁ…もう無理だ。
どう考えてもむりでしょ。
これで我慢できる奴がいるなら俺の前に連れてこい。
『愛…ありがとう。
でも、使うの明日からでいい?』
「それは構わないけど…なんで?」
『今日は…これ着てる時間ないから』
そう告げて愛を横抱きにして褥に連れて行く。
『決めてたんだ。あんたに会ったら…押し倒すって』
驚く愛に口づけをする。
今度は深く、俺まで蕩けるくらい甘いやつを。
もちろん朝まで逃がさないから……