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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第23章 黄水仙(家康)


御殿に戻って書簡の整理をしていると女中がもうすぐ夕餉だと言いにきた。

もうそんな時刻か…あの子まだ帰ってないのか。
愛が居なくなって気づいたけど、
この御殿、こんなに静かだったっけ?

思えば、あの子が来てからいつも周りが騒がしかった。
女中たちもよく笑いながら話していたし、
部下たちも愛様愛様…って。

騒がしかったけど、うるさかったわけじゃない。
この静けさの方が落ち着かないんだ。

なんなのもう…

そう思ってたら、いきなり外が騒がしくなった。

「愛様!おかえりなさい!」

女中たちが騒がしい。ドタバタ走る音まで聞こえ出した。

帰ってきたんだ…

心底ホッとする。
泣かしてしまったし、何も言わないし、
もしかしたらこのまま帰ってこないかも…なんて思ったりもしてた。

外の喧騒に耳を澄ましていると、

『家康様っ』

と、声を大きくした女中から声がかかった。

「なに?」

出来るだけ素っ気なくを心がけた。
でも、声が上ずった。

クソっ…

『愛様が戻られました!夕餉はご一緒に用意致しますね』

そういうと、すぐに立ち去ったようだ。

用意しますね…って…
聞きに来たんじゃないの?決定事項じゃないか…

はぁ…

このため息は違う。
俺……緊張してる…?



しばらくすると、なぜか俺の部屋に夕餉が運ばれてきた。

「え?なに?」

面食らって聞くと、あの子がここで食べたいって言ったらしい。
てゆか、なんでさっきから俺の意見は聞かれないんだ……
まぁ…いいけど…

すっかり用意が終わると、外から声が聞こえた。

「家康…?入っていい?」

少し控えめな愛の声だ。

「だから、あんたは自由にしていいって……」

そこまでいいかけて俺は立ち上がって襖を開けた。

「わ…」

開くとは思っていなかったのか、愛が少し驚いた顔をする。

『…………おかえり…』

目線も合わせず、呟く声しか出ない自分が情けない。

「え……?」

あぁもう!え?じゃないよ!……


『こうしないとわかんない?』

半ば強引に愛を抱き寄せて襖をしめる。

『おかえり……』

もう一度耳元でそう言って、今度は強く抱きしめた。

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