第23章 黄水仙(家康)
終わった〜!
はぁぁぁ…疲れた…
家康に新しい寝着を…そう思い立った次の日に舞い込んだ
かなり大きな仕立ての仕事。
我ながらよくやりきったなぁ…
秀吉さんから依頼された、輿入れの衣装。
もちろん秀吉さんのお嫁さんではない。
大切な仲間の結婚。
慎ましやかに行うというその花嫁の衣装を依頼された。
もっと大々的にするものかと思ったけど、
やっぱり色々な事情があるものだもんね。
それでも、一生に一度…この時代でもそうであってほしいその衣装は
心を込めて作り上げた。
採寸をするために会ったその女性はとても可愛らしくて、
この戦国時代に、好きな人と一緒になれることだけでも幸せなのに…
と、申し訳なさそうにしていた。
なんとなく、慎ましい結婚式の意味を察しながらも、
秀吉さんにはお世話になりっぱなしだし、
あの可愛いお嫁さんに喜んでもらえるようなものを作りたかった。
「生地はいくらかかっても構わない」
そう言って秀吉さんと反物を見に行った。
あれ、結局総額いくらだったのかなぁ…
私は反物を選んだだけだったけど…
とにかく日にちがなかった。
御殿にいたら、集中できないかも…と相談したら
この離れを貸してくれたんだよね。
御殿のみんなには心配かけないようにお城にいるって言っておいたけど…
よく考えたら、家康にはちゃんと言った方が良かったかな…
うーん…でも集中できない理由の一つでもあったから…
今回は大目にみてもらおう。
それにしても、ほとんど毎日政宗がご飯もってきてくれたなぁ。
どーせ一人じゃ飯も食わないでやってんだろって…
まぁその通りだったかも。
持ってきてもらったものさえ、翌日に食べたりしちゃったもん。
でもぜーんぶ美味しかったなぁ。
さて…そろそろあの子が来るかな?
喜んでもらえますように……
それで…幸せになってもらえますように……
私は衣桁にかけた打掛を最後の確認をするように丁寧に確認する。