第23章 黄水仙(家康)

あれから数日が経った。
結局愛にはお礼も謝罪も出来ずにいる。

腕の様子を確認しようにも、なぜか全然愛に会えなかった。

よく考えたら、いつも愛に会えてたのは、
あの子から俺に会いにきてたからだと気づく。

そうか…会いに来てないのか…

そんな事にも気づかなかった。
何日経った？

俺は記憶をゆっくり手繰り寄せる。
薬草の整理をしてたのは……もう三日前か…

あの子を見ないわけじゃない。
女中と一緒に掃除をしていたり、
出来上がった着物を届けに城下に出るところだったり…

話しかければいいんだろうけど、
いつもあの子の周りには人がいるから何となく機を逃す。

何度か目があった気がするけど、あの子も何も言わない。
もしかして…さけられてる？
いや、そんな感じはしないな…

あの子は顔に出やすいから、避けてるならもっとあからさまにわかるだろう。
じゃあ…

俺はある一つの可能性に辿り着いて、すぐに打ち消す。
そんなわけない。
その可能性は…ない、と言い切れるか？

そもそもはまるで俺が冷たく当たってしまってたんじゃないか。
でもあの子はそれが俺の天邪鬼だってわかってくれてるから…

俺はなぜかまたあの時の政宗さんの言葉を思い出した。


「そうやって美味いものは美味いって素直に表情に出るお前だから
作り甲斐もあるってもんだ」


俺が伝えなかったから、もうあの子は俺のために何かをする事をやめたのだろうか。
それとも……

再び俺は自分が思いついてしまった思考にもどる。


もう…俺に興味がなくなった…とか…


興味がなくなったとは我ながら甘い表現だと思った。
それは所謂…

好きじゃなくなった…

ってことだろうが…