第23章 黄水仙(家康)
気になる。
ああー。
気になる。
ああは言ったものの、あんな顔させた後だ。
もしかしたら政宗さんに気づかれて、根掘り葉掘り聞かれてるかもしれない。
そしたらあの子…絶対言っちゃうでしょ…
そしたらややこしくなる。
そしたら……
俺は作業もままならず、そんな事ばっかり考えていた。
クソっ
全てを放り出して、気づけば愛の部屋へと向かっていた。
卑怯だとは思いながら、内側から愛の部屋の隣に入った。
なんで自分の御殿で盗み聞きみたいなこと…
そうは思ったが、表から堂々と入る気にもなれなかった。
様子見るだけだし…
そう言い聞かせて、静かに耳をそばだてる。
え…なに…これ。
凄く楽しそうなんですけど……
俺の話してるかもって心配…馬鹿みたい。
なんでそんな楽しそうに…
って……。
なんで俺の話してない事に苛立ってんだ。
してたらめんどくさいって思ってここまで来たんだから、
別にそれでいいじゃないか…
座布団?
ああ…あの座布団に座ってるのか。
あれ、凄い手が込んでて…
褒められて照れてるの?
あの顔見せてるのか…なんかムカつく。
俺は勝手にあの子がどんな表情で褒められてるかを想像する。
はにかんだ笑顔で少し頬を染める。
ああもう!政宗さんに見られるのはなんかやだ。
あれ…そういえば俺はあの座布団に何か触れただろうか…
確かに一目見て、愛が作ったとわかった。
手が込んでるように見えて感心した。
簡単にできる…なんて話、聞いてないな……
そんなことをぼんやり思っていると、
もっと楽しそうな声が聞こえてきた。
政宗さん団子作ってきたのか…
……っ…
また…今度は顔だけで…?
三成……ゆるさない…
苛々していたところに政宗さんの言葉が俺を突き刺した。
「恥ずかしがらなくていい。
そうやって美味いものは美味いって素直に表情に出るお前だから
作り甲斐もあるってもんだ」
そんなの……わかってるよ…
俺はいたたまれなくなって、その場をそっと後にした。