第22章 立待月に焦がれて(政宗)
「嫉妬…してくれたんだね」
「おま…」
愛を信じてやれなかった事を咎められると思っていた。
けれど、愛からでた言葉は想像もしていない言葉だった。
「馬鹿…言うな…」
「違う…の?」
(そんなのわかってんだよ!)
戸惑う表情の政宗を、愛は優しく抱きしめる。
「ごめんね、私…政宗のこと不安にさせてたんだね」
不安に…
そうか…嫉妬は怒りだけじゃないのか…
不安にもなって…痛い…
愛の言葉を聞くと全てストンと心に降りてくる。
「ごめんね、やっぱり悪いの私だったね…」
政宗はなにかを言い返そうとした。
けれどその言葉は何も出てこない。
いや、出てこないのではない、何かを言おうとするとなぜか身体の奥から泣きたくなってしまう。
「私は…政宗以外見てないよ?いつでも。
だって、ようやく一緒になれた事忘れない。政宗と会えなかった日々のこと忘れない。
どんな事があっても、絶対に政宗を裏切るような事はないから」
(そうだ…あの日、俺は大切なものを取り返して心から安堵した…)
子供をあやすような優しい声が政宗の腕の中で響く。
そして愛の手が政宗の頭に伸びてきて、髪を梳くように撫でた。
「おい…あんまり子供扱いするなよ…」
そう言うのが精一杯だった。
「ふふ……。でも、嬉しいよ」
「ん?嬉しい?」
そう言うと二人は見つめ合う。
「うん、嬉しい。いつも自信たっぷりの政宗が
ヤキモチ妬いてくれてたんだもん」
その愛の言葉を聞くと、政宗はすっかりいつもの表情に戻る。
「おい、お前なぁ…いい度胸だな。俺に嫉妬させるなんて」
余裕たっぷりに言ったつもりだった。
「ふふ、認めちゃったね。よしよし」
愛は笑いながら政宗の頭を再び撫でた。
「ふ…」
その表情につい政宗も笑みを漏らす。
「な、なに…」
「いや、俺が一番見たかったものが見れただけだ」
ちゅ…
そう言うと愛の唇を掠めとる。
「ん…っ…もうっ」
そう言って愛は頬を膨らます。
「ははっ、お前はやっぱり俺の隣で笑ってないとな」
そう言うとクシャクシャと頭を撫で回す。
頬を膨らましながらも、幸せそうに笑う愛を見て政宗はホッと息をつく。